量子力学は、本当は量子の話ではない:「奇妙な」解釈からの脱却を探る
著書:Philip Ball、翻訳:松井 信彦
おすすめ度:★☆☆☆☆
量子力学に興味があったので読んでみた。この本は、数式などに触れず、量子力学の摩訶不思議な事象に対する様々な解釈とその歩みが書かれている。量子力学は、古典力学と違い、人間の感覚とはかけ離れた振る舞いをすることから、概念そのものが難しく、書いてある文章を理解すること自体に苦労した。そもそも、この著書にも書いてあるが、我々人間が日常で使っている言葉では表現できない概念であり、それをわかりやすく例えることすら難しい。しかし、ワードだけ聞くと面白さが伝わってくる。あるときは粒子のような振る舞いをし、あるときは波動のような振る舞いをする「粒子と波動の二重性」や複数の状態を持つ「重ね合わせ」、そしてそのどちらかしか知りえない(すべてを同時に知ることができない)「不確実性原理」、どれだけ離れていても瞬時に互いに影響を及ぼし合う「量子もつれ」。これらの概念がどうやって導き出されたのか、二重スリット実験やシュテルン=ゲルラッハの実験などの実験も多く説明されている。正直、書いてある内容が難しく、全く理解できないのだが、大雑把な理解でも面白い。というか、違う世界だなぁ、と初めて都会に来た田舎者のような感覚になる。また、現代の解釈に至るまでの量子力学の史実も書かれており、量子力学が多くの天才物理学者の叡智の結晶であることがわかる。
しかし、如何せん内容が難しく、私のような素人が読むと途中で挫折したくなると思う。翻訳された本というのもあって、わかりにくい文章もあるので、もう少しわかりやすい初心者向けの書籍を読めばよかった。
量子力学は、本当は量子の話ではない:「奇妙な」解釈からの脱却を探る
とてつもない日本
著書:麻生太郎
おすすめ度:★★★☆☆
麻生太郎がメディアに露出するときといえば、何かしら失言をし、それをメディアが挙って騒ぎ立てるときだ。直近だと、上川陽子外相への発言で目立っていた。私も20代前半まではテレビを見ていたので、”失言を繰り返す古参の国会議員”というイメージが植え付けられていた。しかし、発言の一部を切り取り印象操作を繰り返す既存メディアとは裏腹に、彼が登壇し、話している動画をネットで見てみると、結構的を射たことを言っており、納得させられることが多かった。そして見た目とは逆で、割と柔軟な発想を持っている人だと思った。また、元首相であり、今年の自民党総裁選のキングメーカーとして、自民党内で大きな力を持つ、麻生太郎さんに興味を持ったのでちょっくら読んでみた。
この著書では、メディアでは報じられない、日本人が活躍している国際的な活動の事例や国際社会における日本の役割、世界に誇れる日本の文化や若者の可能性などが書かれており、自国に対してネガティブな報道が多いメディアに対して異を唱えている。また、日本の学校教育についは数学が得意な人は数学の才能を、スポーツが得意な人はスポーツの才能を、パソコンが得意なやつはパソコンの才能を伸ばすべき、と訴えており、今の日本の平準化教育は時代遅れだと指摘している。
一番印象に残ったのは、虚言としての平等、そしてその平等信仰についてへ指摘だ。平等とは、簡単に使える美辞麗句であり、聞こえは良いが、皆が同じような結果を得られないのが世の常であり、生まれ持った能力は不平等で、だからこそ個々の価値が創造されるのであり、不平等というのは突き詰めていけばいくらでも出てくるもので、何でもかんでも平等を唱えればいいものではない。経済格差にしても、結果が平等でないから、人は結果を求めて努力するものであり、努力しても同じ結果しか得られないのであれば人は努力しないし、活力も生まれない。だからこそ、共産主義体制の国は自由経済を取り入れた。ただし、結果は不平等でも機会は平等にするべきで、一定の弱い立場にある人においてはしっかり社会福祉、セーフティーネットで守っていくべきである。と、ざっくりまとめるとこのようなことが書かれていてすごく納得した。
靖国神社についても印象に残った。いつも外交問題に発展してしまう靖国神社への参拝だが、いわゆるA級戦犯の分祀については否定的で、特に政教分離である以上、一宗教法人である靖国神社に対し、政治家が分祀論を唱えるのはいかがなものか、と私見を述べている。とはいえ、日本のために命を落としていった方々を祀り、祈る場所を提供するというのは本来、国の責任で行うべきであり、非宗教法人化し(もちろん任意解散で)、その後一旦財団法人となり、設置法を整備した後、国営化することが望ましいのではないか、ということが書かれていた。
まぁ、この著書は2007年発行なのでかなり古いが、自民党総裁選のキングメーカーがどんな考えを持っているのか(または持っていたのか)がわかるので、読んでみると面白いと思う。
記事を読んでいただきありがとうございました。